10月の骨盤臓器脱手術記録。「カイゼン」と「言語化」のお話。

10代の頃はゲーセン通いに情熱傾けてました(汗) 画像引用

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

10月に手がけた手術は24例でした。

 

先月(2024年10月)に、ワタクシが術者を務めた手術は、24例でした。

 

24例の内訳は・・・

 

 

↑骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)の経腟手術が19例

 

 

↑マンチェスター手術が1例

 

 

↑直腸瘤の経肛門手術が1例

 

↑直腸脱の経肛門手術が2例

 

↑尿失禁に対するTOT手術が1例でした。

 

 

また私とは別に、↑腹腔鏡チームが経腹手術を10例ちかく行っていました。

 

「カイゼン」していく

 

この言葉、トヨタで有名ですね。

 

いま上手くいってないことを、どうやったらうまくできるようになるか。

いま上手くいってることを、どうやったらもっとうまくできるようになるか。

 

 

 

骨盤臓器脱手術でも、これにならって、「カイゼン」を繰り返してます。

 

もっと再発を少なくするにはどうするか。

もっと臓器損傷リスクを低くするにはどうするか。

もっと出血リスクを低くするにはどうするか。

もっと手順をシンプルにするにはどうするか。

もっと短時間で行うにはどうするか。

もっとコストや人手を減らすにはどうするか。

 

専門書とかに記載されてるのは、あくまでも「標準的な」やり方です。

それを体得するのは前提。

 

そして、そこからさらに突き詰めていくのであれば・・・

ひとつの課題を明けても暮れても考え続けたり、学会でピンときたDr.をつかまえて質問したり、世界各国の手術動画からヒントを得たりして

自分なりに工夫し続けるしかありません。

 

「言語化」していく

「カイゼン」を繰り返し、いったん最善と思われる方法を確立したら、それを言語化していきます。

そうすることで「再現性のある技術」となり、後進に伝えやすくなるわけですね。

 

 

たとえば、「↑膣壁の切開剥離」という一連のステップ。

 

ボス生(止血剤を入れた生理食塩水)をどの層に打つか。どれくらい打つか。

ボス生が正しい層に入ったらどう見えるか。間違った層に入ったらどうか。

膣壁をどこから切開して、どこまで進めるか。

どうやって正しい剥離層に入るか。正しい層はどう見えるか。

正しい層に入ったら、そこからどうやって剥離を進めていくか。

間違った層に入ったらどう見えるか。どうやって正しい層に入り直すか。

剥離をどこまで進めていくか。

剥離できない場合には、どうやって迂回ルートに入って立て直すか etc・・・

 

これらをすべて、言語化していきます。

 

 

これって実際には、5分くらいで終わる作業なんですケレドモ・・・

言語化したら、これだけの注意事項があります。

当然ですが、きちんと教わって修練つまないと、まともにできるわけありません(笑)

成否が運任せの「再現性のない手術」になってしまう。

 

そしてこれらの「一連のステップ」が、10とか20とか組み合わされて、ひとつの手術が成立するわけです。

 

 

画像引用

 

「↑シューティングゲームは覚えゲー」って言われます。

相手の出現コース攻撃パターンを暗記して、自分のやるべき作業を決めておく。

反射神経頼りの出たとこ勝負だと、どこかのステージで行き詰る。

 

そして実際のところ・・・

手術も「覚えゲー」なんですよね。

器用さとかセンスが優れていても、正しいやり方を覚えてその通りにやらないと、うまくいかない。

 

 

と、いうことで。

 

「覚えゲー」なんだから、若手と手術するときには・・・

ワタクシ「教えたやり方を遵守し、正確に遂行できてるか」を見てます。

 

ぎこちないとか、少々時間かかるとかは無問題。

やり方を覚えてなかったり、我流を出すのはNG。

そんなスタンス。

 

若手がいろいろ工夫を考えるのは、もちろん素晴らしいことなんですケレドモ

まあ、だいたい私が検証済みだったりするんです(笑)

 

だったらその前に・・・

2500例近い骨盤臓器脱手術経験を踏まえて確立された、現時点で最善と思われる「型」を、まずは習得しようじゃないか。

 

画像引用

 

ほら、「守破離」とか「型がなければ形無し」とか、言われてるじゃありませんか。

 

 

以上です。

骨盤臓器脱手術は、「カイゼン」「言語化」を繰り返して、進化してきたというお話でした。

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科