「外科系の医師は手術が仕事なんだから、全員が術者になって、毎日毎日手術する日々を過ごして、それを定年近くまでずっと続けていくんだろう」
世間の人はそう思われるかもしれませんね。
でも現実は、これとはずいぶん違います。
独立した術者になるだけでも容易なことではないし、
独立した術者になって、それを10年20年と続けていくのも大変なんです。
これって、手術を生業とする外科系の先生なら、きっと同意してくれると思います。
「独立した術者」になるのは容易なことではありません。
「独立した術者」になるのは容易なことではない。
これはほんとにそう思います。
「独立した術者」というのは、「自分と若手で手術する」とか、「自分一人で手術する」とか、要は「自分が指揮をして責任を取る立場」のことです。
たとえ15年選手であっても、上司と一緒じゃないと手術を任せてもらえないのであれば、それは「独立した術者」ではありません。
「独立した術者」になるために超えるべき、数多くのハードル。
外科系はどの診療科でも、「独立した術者」になるのに、最低10年かかります。
そしてこの10年の修行を積むこと自体が、容易なことではありません。
「独立した術者」になるまでに、たくさんのハードルに遭遇します。
症例の多い病院に在籍できる機会がなかったり・・・
有名病院でも激務に耐えられなくなったり・・・
雑用が多すぎて嫌になったり・・・
薄給で嫌になったり・・・
医局人事が嫌になったり・・・
毎年の転勤に耐えられなくなったり・・・
論文書きや学会活動のdutyが嫌になったり・・・
病院の勤務環境が劣悪だったり・・・
上司に嫌われて干されたり・・・
理不尽なクレームが嫌になったり・・・
家に帰れず妻が耐えられなくなったり・・・
激務で身体を壊したり・・・
開業医の実家の都合で修行を中断したり・・・
いいポジションをゲットできなかったり・・・
そもそも術者としての適性がなかったり・・・
医師が手術の修行から降りる理由って、私が見聞きした限りでも、こんなにたくさんあるんです。
10年の修行を耐え抜いて、「独立した術者」になれた医師は、皆こんなハードルをクリアしてきてるんですよね。
辻仲病院は中規模病院だけど、私には合ってたみたいです。
以下、わたくしごとで恐縮ですが・・・
私は約15年間、大腸肛門外科医として、手術や大腸内視鏡に明け暮れていました。
その後2010年から骨盤底領域に本腰を入れ、この領域の手術(子宮脱膀胱瘤や直腸瘤や直腸脱)を、術者として1700例ほど担当させていただきました。
マイナーな領域ではありますが、上記のハードルをクリアして、いちおう「独立した術者」になれたということは、努力だけでなく幸運にも恵まれたんだと思っています。
辻仲病院は中規模の民間病院ですが、私には合ってたんですね。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科