骨盤臓器脱手術における「バックアッププラン」のお話

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

今回は、「手術のバックアッププラン」について、お話させていただきます。

マニアックで恐縮ですが、よろしければお付き合いください。

 

骨盤臓器脱経腟手術の3ステップ

 

骨盤臓器脱の経腟手術は、大きく↑3つのステップに分けられます。

①剥離(はがす操作)

②穿刺(靭帯に糸を固定する操作)

③再建(正しい形に修復する操作)

 

そしてそれぞれのステップに、「メイン」と「バックアップ」のプランがあります。

↓飛行機でも、油圧系統や電気系統にバックアップ機能が用意されてるのと、考え方は同じです。

 

 

「メイン」と「バックアップ」のプラン

 

「メイン」は、安全性、確実性、手間などの観点から、総合点で最善のものです。

すべての手術症例で、まず「メイン」が考慮されます。

 

でも、必ずしもすべての症例で、「メイン」のプランが使えるわけではありません。

「メイン」のルートで剥離すると癒着強くて危険

「メイン」の部位を穿刺したら出血しやすい

「メイン」の手法で再建すると挙上が不十分

 

・・・このような場合には、「バックアップ」のプランに移行します。

 

 

もちろん、その場で即興でできることではありません。

 

「メイン」と「バックアップ」に必要とされる手技を厳選し、磨き上げ熟達し、「武器化」しておく。

あらかじめフローチャートを作っておいて、「こういう時はこの武器を使う」というプランを作成しておく。

そして手術当日の朝にイメトレを行って、すべての武器をいつでも駆使できるようactivateしておく。

 

こうすることで、いざという時に対応できるわけですね。

 

手術の世界はやっぱり徒弟制度が必要

 

通常、手術書とかセミナーとかで学べるのは、「メイン」のやり方だけです。

限られた紙面や時間で効率よく伝えようとする以上、それは当然のことです。

 

で、机上の勉強で「メイン」だけを学んだ術者が、何年間何百件という手術で結果を出し続けられるかと言うと・・・

もちろん、そんなに甘くありません(笑)

 

 

 

人体相手の作業だから、想定通りに行かないことも多々あるんですね。

 

そのような場合に・・・

バックアッププランを遂行できるか。二の矢三の矢を放てるか。いろんな引き出しを持ってるか。

 

 

 

外科系の教育システムは、いまだに旧態依然と揶揄されますが・・・

こういうのまで体得して独り立ちするには、やっぱり徒弟制度と、何年にもおよぶ(外科系は10年と言われる)修練が必要ということです。

 

今回はちょっとマニアックでしたかね。

失礼しました・・・

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科