おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。
僭越ながら・・・
ワタクシ女性骨盤底領域の手術において、「得意意識を持ってる手術」と、「そうでない手術」があります。
今回は、このへんの事情についてお話させていただきます。
大御所の先生から怒られそうなネタですが、よろしければお付き合いください・・・
得意意識を持っている手術=白黒はっきりつきやすい手術
↑「形態」を元に戻す手術が、これに該当します。
具体的には・・・
- 骨盤臓器脱(子宮脱膀胱瘤直腸瘤)の手術
- 直腸脱手術
- 痔核手術
などですね。
いずれも「脱出してたのを、もとの正常形態に戻す」という共通点があります。
この手の「形態」の手術は、↑「治る・治らない」の境界が明らかです。
そして、手術すれば、まず確実に治すことができます(重症直腸脱はたまに苦戦することがありますが)
だからこのような手術では、得意意識を持ちやすくなります。
すべての手術が、こうだったらいいんですけどね・・・
でも当然ながら、そんなに甘くありません(笑)
得意意識を持ちにくい手術=白黒はっきりつきにくい手術
↑「機能」を回復させる手術が、これに該当します。
具体的には・・・
などですね。
排便機能とか、排尿機能とかを、回復させる手術です。
この手の「機能」の手術は、「治る・治らない」の境界があいまいになりがちで、「微妙」な結果に落ち着くケースも時々あるんです。
だからどうしても・・・
この手の手術には、得意意識を持ちにくいんですよね。
このような場合に大事なのは・・・
「『手術の限界』を患者さんに説明して、十分理解していただいた上で手術に臨むこと」です。
直腸瘤手術では・・・
手術しても、排便障害が完全に消失するとは限らない。
「だいぶ良くなったけど、まだ症状が残る」みたいに、曖昧な結果になることもある。
(くわしくはこちら)
TOT手術では・・・
手術しても、「尿漏れがゼロになり、尿がスムーズに出る」という理想的な状態になるとは限らない。
すこし尿漏れが残るくらいで妥協した方が方がいいこともある(やりすぎると尿が出せなくなる)
(くわしくはこちら)
↑この手の手術を考えている方には、上記を十分に説明して、カルテにもしっかり記載します。
「イマイチ理解してくれてなさそう・・・」と感じた場合には、家族とあらためて来てもらったり、場合によっては手術をおすすめしないこともあります。
「形態」の手術より「機能」の手術の方が、慎重な対処を要する。
以上です。
「形態」の手術より「機能」の手術の方が、慎重な対処を要するということですね。
さいわい、ワタクシが手がける手術の大半は(95%以上)、「形態」の手術だから有難いんですけどね(笑)
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科