おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今年はなぜか、「膣閉鎖術後の再発に対する手術」を経験する機会が多いです。
全例が、過去に他院で膣閉鎖術を受けて、その後再発して当院紹介というパターンですね。
ということで今回は、膣閉鎖術のお話をさせていただきます。
この術式、当院でも初期にときどき行われてたんですけど、現在は淘汰されてここ10年くらい行われていません。
膣閉鎖術とはどんな術式?
↑これが、骨盤臓器脱でもっとも多いタイプの、「子宮脱+膀胱瘤」です。
↑これが、膣閉鎖術の完成図です。
前後膣壁の膣粘膜をはがして、はがした場所を縫い合わせ、膣の穴を縫い閉じる方法です。
見た目は単純明快で、短時間でできそうな手術に見えるけど・・・
粘膜をはがす層とか、はがす範囲とか、縫い合わせる手順とか、いろいろ注意事項があります。
そしてけっこう手間がかかるし、一定頻度で再発もあります。
膣閉鎖術後の再発パターン
膣閉鎖術後の再発パターンは、ふたつあります。
手前もっこり型
まず、縫い合わせた場所の手前側から、膀胱瘤と直腸瘤が出てくる再発パターンです。
「手前もっこり型」とでも言いましょうか。
このパターンの再発って、紹介状が特徴的です。
膣閉鎖術した病院から紹介状が来た場合、文面には「再発はしてませんが云々・・・」と書かれてたりするんですよね。
まあたしかに「子宮脱は」、奥に引っ込んでて再発してないんだけど・・・
膀胱瘤と直腸瘤は脱出してるんだから、やっぱり患者さんは「再発した」と思いますよねえ。
全部はがれた型
もう一つの再発パターンは・・・
↑縫ったところが全部はがれて、完全にもとの「子宮脱+膀胱瘤」の状態に戻ってる再発です。
こちらはまあ、誰が見ても明らかな「再発」であります。
膣閉鎖術後再発症例の手術
この「膣閉鎖術後の再発症例(手前もっこり型)」って、手術方法は決まっています。
まず、↑膣閉鎖術で縫い合わされた場所をはがしていきます。
近くに膀胱や直腸があるので、臓器を損傷しないよう、慎重に操作を進めるのがポイントです。
↑はがし終わったところです。
これで、通常の「子宮脱+膀胱瘤」の状態に戻りました。
あとは、↑いつもやってる「子宮脱+膀胱瘤」の手術と同じです。
この膣閉鎖術、当院では淘汰された。
この膣閉鎖術、当院ではすでに淘汰され、近年ずっと行われていません。
- 手術時間も侵襲(ダメージ)も、当院でいつも行ってる術式と大差ないと感じたこと。
- 他の経腟手術より再発しやすいこと。
- 膣を縫い閉じてしまうことに疑問を感じたこと。
このあたりが理由です。
(注)これはあくまでも当院限定の話です。
膣閉鎖術に熟達して好成績をあげてる施設もあるかもしれませんからね。
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科