骨盤臓器脱の経腟手術における、低侵襲化(低ダメージ化)のおはなし。

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

今回は、「経腟手術の低侵襲化(低ダメージ化)」について、お話をさせていただきます。

よろしければ、お付き合いください。

 

「手術の低侵襲化」は、多くの点で進化した。

手術侵襲って、いろんな要素が関係しています。

まず以下のようなことは、確実に言えると思います。

 

  • 手術時間が短い方が低侵襲。
  • 子宮を温存できる方が低侵襲。
  • 穿刺数が少ない方が低侵襲。
  • 手術創(傷)が小さい方が低侵襲。
  • 出血少ない方が低侵襲。

 

さらに・・・

  • メッシュを使わない方が、メッシュトラブルによる再手術を回避できるから低侵襲。
  • 再発少ない方が、一度の手術で済むから低侵襲。
  • コスト低い方が、患者さん負担&医療財政に対して低侵襲。

このへんも、広い意味では「低侵襲」に含まれると考えます。

 

これら8つの要素について、掘り下げてみます。

 

①手術時間

骨盤臓器脱の経腟手術は、初期には2時間半くらいかかってました。

現在では1時間くらいで完了するようになっています。

 

②子宮温存

 

↑20世紀の経腟手術は、「子宮を取って膣を強く縫う方法」が主流でした(従来法)

 

 

↑現在の経腟手術は、全例で子宮を温存できるようになっています。

 

③穿刺数

 

穿刺(せんし)って、靭帯に糸を通す作業のことです。

 

 

初期の経腟手術では、6か所の穿刺が必要でした。

現在では技術が進化して、原則1か所(状況により2か所)の穿刺で完結するようになっています。

 

④手術創の大きさ

 

初期の穿刺は、↑手術創(傷)を大きく開いて行っていました。これを6か所とかやるわけです。

 

 

現在の穿刺は、↑指一本通るだけの最小限の創で、原則1か所で行えるように進化しています。

 

⑤出血量

創が小さくなり、穿刺数も減ったので、出血リスクも少なくなります。

 

輸血が必要となるような多量の出血は、ここ1000件以上起こっていません。

 

⑥メッシュ

 

初期の経腟手術は、大きいメッシュ(左上)が主流でした。

 

時とともにメッシュは小さくなってゆき・・・

今ではメッシュを使わなくても、メッシュと同等(同等以上)の成績を得られる手法が確立されています。

 

⑦再発

近年の再発率は、1%程度です。

 

限りなく0に近づけるべく、努力を続けています。

 

⑧コスト

メッシュも使わず、腹腔鏡の器械も使わず、ましてやロボットも使わないので、もっともローコストの手術です。

 

もっとも医療財政に優しく、患者さんの費用負担も小さく、病院持ち出しも少ない手術だと自負しています・・・

 

進化してないところもあります・・・

以上のように、多方面で進化を遂げた経腟手術ですが、進化してないところもあります。

それは、「性交障害リスク」です。

 

↑経腟手術では、膣壁に傷ができるから、性交時に違和感や痛みを生じる可能性があるわけですね。

 

だから、性生活を重視する方には、はじめから腹腔鏡手術をおすすめする方針としています。

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科