おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
手術を8例行いました。
この週は、↑子宮脱+膀胱瘤の手術を7例、尿失禁のTOT手術を1例行いました。
例によって、みなさんほぼ予定通りの退院です。
骨盤臓器脱手術を受けるご婦人って、キャラクターに一定の傾向があると思ってます。
ポジティブな感じの人が多いんです。
ネガティブな感じの人もときに受診してくるけど、こういう人は手術受けるまでに至らないんです。
やっぱり医療(とくに手術)って、信頼関係が無いと、手術みたいな踏み込んだことはできないんですよね。
ということで、今日はそんな「ネガティブ」に関係がありそうな、「無断録音」の話です。
無断録音してもメリット無いですよ・・・
診察時に、スマホでこっそり無断録音している人がいます。
「この患者さん(または家族)、無断録音してるなー」って、だいたい分かります。
もちろん、パワハラとか犯罪をされてるのであれば、録音を「こっそり」やる必要があるでしょう。
でも医療って、そうじゃないですよね。
この無断録音、医療に関しては、やってもメリットありません。
理由を説明しましょう・・・
無断録音されても問題ないような説明を心得ているから
スマホによる無断録音が、医師の間で認識されるようになり、それに合わせて説明スタイルも変わってきました。
①「文書に書いてること」以外の事は原則言わない。
②「大丈夫でしょうか?」と聞かれても、原則「大丈夫」と言わない。
医師掲示板の記事とか、同僚との雑談とかによると、最近の医師は↑このように「録音されていること」を前提とした説明を心がけている人が多いようです。
ほとんどの患者さん(家族も)は善人であることは分かってるんです。でもごく一部に「悪意の人」が紛れ込んでいる以上、このようにせざるを得ないんですね。
まず①です。
これは「言った言わない」というトラブルに陥らないために、大事なことです。
文書に書いてあることだけ話すようにしていれば、このトラブルは回避できるんですね。
もちろん患者さんからいろいろ質問がくるから、「文書にないこと」を話さないといけないこともあります。
その場合には、話した内容をカルテに記載するようにしています。
次に②です。
医者が「大丈夫」と言ってくれないって、心細い気がしますよね。
私だって、「大丈夫、任せてください」みたいなことを言って、手術前の不安な患者さんを勇気づけてあげたいんです。
でも医療って、人体相手の行為だから、100%はありません。誰にでも不測の事態が起こる可能性があるんです。
もしこんなとき「大丈夫」とか言ってしまって、万一の事態が起こったらどうでしょう?
そしてこの会話を無断録音されてて、「あのとき大丈夫と言ったじゃないか!」と詰め寄られたら?
・・・よって私の場合は、「大丈夫」と言わないかわりに、以下のように言うようにしています。
「合併症の可能性ゼロ・再発可能性ゼロの手術はこの世に存在しません」
「でもほぼ全員(98~99%)が、大きなトラブル無く、だいたい予定通りに退院できています」
「そしてほぼ全員(98~99%)が、骨盤臓器脱を一度の手術で治せています」
こんなふうに、「数字」を言うようにしてるんですね。これでも患者さんを勇気づけることはできるでしょう。
やっぱり無断録音されていい気はしないから。
「無断録音されてる」って気づいたら、誰だっていい気はしませんよね。
その時はどうしても「防御モード」になってしまいます。
だから・・・
「できるだけ親身になって話を聞きたい」とか、
「なんとか便宜はかって早く手術してあげたい」とか思わなくなります。
信頼して任せてくれる人のほうが経過がいい(印象がある)
↑これはエビデンス(医学的な証拠)があるんじゃなくて、あくまでも私の印象なんですけど・・・
↑私と同じこと感じているドクターが、他にもいるようですね。
「こっそり録音」って・・・
上記の「せんせに任せるわ」とか「楽観的」と正反対の行為だと思いませんか?
録音したいならひとこと言って堂々と。
「録音はダメ」と言ってるんじゃないんです。
説明内容を、あとで確認したい人もいるでしょうからね。
わたしが言いたいのは・・・
「こっそり録音って、やってもメリット無いですよ。録音したいなら断ってから堂々とやりましょう」ということなんです。
かつて、テープレコーダーを「デン!」と置いて、
「先生の話を忘れないように、録音させてくださいな」というおばあちゃんがいました。
こんなのは全然OKですからね・・・
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科