キャンパス駅前はムクドリだらけで大賑わい・・・
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
手術を7例行いました。
この週は、子宮脱膀胱瘤の手術を7例行いました。
うち6例は、いつも通り問題なく完了したんですけど・・・
残りの1例が大変でした。
それはなぜかと言いますと・・・
「ペッサリーで長年粘って限界に達し、ようやく手術を決心した人」だったんです。
ペッサリーで粘りすぎたAさんの手術
↑こちらは、子宮脱膀胱瘤で、婦人科クリニックから紹介されてきたAさんです。
紹介状には、「以前から何度も何度も手術を勧めてきたけれど、そのたびに本人が拒否するから、仕方なく10年以上ペッサリーで対処してきた」と書いてありました。
膣壁のただれが悪化して、出血や悪臭がひどくなってきて、「もう限界」とのことで娘さんに連れてこられました。
娘さんも長年、Aさんのクリニック通院に付き合ってきたから、いいかげん決着をつけたいとのことでした。
正常の膣粘膜はこんな感じです。
↑まず、よくある骨盤臓器脱の状態を示します。
この場合、膣粘膜は正常の人と変わりありません。
表面がつるんとしていて柔らかいんです。
手術の時にも、切ったり縫ったりするのは容易にできます。
一方、Aさんの膣粘膜は・・・
一方、↑このAさんの骨盤臓器脱は、大変な状態でした。
ペッサリーによる長年の接触で、膣粘膜の大部分を潰瘍が占めています。
膣壁が分厚くボロボロになっており、あちこちから出血していました。
多量のおりもので、でろでろにただれています。
たしかに、ペッサリーはとっくに限界で、手術するしかない状態ですね。
もっと早く来ればイイノニ・・・(ボソ)
ただこのような場合、すぐに手術するわけにはいきません。
いまは炎症がひどい状態ですから、手術するには危険なんです。
しばらくペッサリーを外して、潰瘍や炎症が落ち着つくのを待ってから、手術を行うことにしました。
さてさて手術。
さてさて数か月後・・・
ほんとはもっと待ちたかったけど、本人が「ペッサリー無しだと耐えられない」とのことで、やむなく手術に踏み切りました。
まだ膣粘膜には、あちこちに潰瘍が残っています。
予想通り、癒着が強くて、剥離(はがすこと)操作に苦労しました。
出血量が通常より多くて手間取ったけど、臓器損傷を起こすことなく進めることができました。
手術操作で苦戦したのは、最後の↑膣粘膜の傷を縫う所です。
正常の膣粘膜であれば、薄くてしなやかで強度があるので、縫い閉じるのは容易です。
でもこのAさんの膣粘膜は、分厚くてグズグズしてて脆くなっています。
針糸をかけて、ちょっと糸を引くと、組織がブチブチちぎれてきます。
ということで細心の注意を払いつつ、なんとか全部縫い縮めることができました。
こういうケースだと、術後に出血したり、縫った傷が開いたりする恐れがあります。
入院中はなるべく安静にしてもらったところ、さいわい問題なく経過して、予定通りに退院できました。
ホッとしました(笑)
ということで結論です。
ということで結論です。
ペッサリーで長年粘っても、なにひとついいことはありません。
主治医に手術を勧められたら、素直に従うのが賢明ですよ。
まあ、言ってることはいつも通りということで・・・
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科