↑当院のエレベーターです。貼紙多数・・・(反対側にも)
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、例によって「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう、数週間前の日常を描写しています。
手術を7例行いました。
この週は手術を7例行いました。
子宮脱+膀胱瘤の手術が5例、直腸脱の手術が1例、尿失禁の手術(TOT手術)が1例です。
全員大きな問題なく経過し、ほぼ予定通りに退院されました。
いつも通りの日常です。
骨盤臓器脱を放置するとどうなるの?
「骨盤臓器脱を放置してたらどうなるんですか?」という質問、よくいただきます。
まず言えることは、骨盤臓器脱が自然に治ることはありません。
一生このままか、徐々に悪化していくかのどちらかです。
軽症のうちは、「下がってくる感じ」くらいしか症状がないので、とくに問題はないんです。
でも放置して重症化してくると、いろんな問題を生じてきます・・・
おりもの・出血が続く
これは言うまでもないですね。
子宮が大きく脱出してきたら、下着とこすれて、おりものや出血を生じるようになります。
いつも下着が汚れて、不快感が続きます。
排尿障害・尿路感染が起こる
↑これが、正常の膀胱の位置です。
そして↑これが、子宮と膀胱が下がってきたところです。
骨盤臓器脱が重症化して、膀胱が大きく脱出すると、尿道が強く屈曲(青矢印)してきます。
その結果、尿道が圧迫されて、おしっこが出づらくなってきます。
残尿がどんどん増えてきます。
その結果、残尿感とか頻尿とかが起こるようになります。
過活動膀胱の薬を処方されることがありますが、多くの場合、効果はありません。
手術で膀胱を正常の位置に戻すしか、根本的な治療法はありません。
また残尿が続いた結果、膀胱内に細菌が繁殖して、しょっちゅう膀胱炎を起こすようになります。
ひどい場合だと、尿が「にごり酒」みたいに汚れている人もいます・・・
そして最悪の場合、おしっこがまったく出せなくなって、おしっこの管(バルーンカテーテル)を留置する必要が出てきます。
水腎症で腎臓に負担がかかる
腎臓と膀胱をつなぐ管がありまして、これを尿管と言います。
この尿管って、↑図のような感じで、膀胱につながっています。
腎臓でつくられた尿が、この尿管を流れて、膀胱に送られます。
重度の骨盤臓器脱では、ときどき困ったことが起こります。
膀胱が大きく下がることで、この尿管が伸ばされたり圧迫されたりするんです。
その結果、尿が流れにくくなって、↑尿管がだんだん拡張してきます。
これを「水腎症」といいます。
放置しておくと、腎臓に負担がかかって、腎機能が悪くなっていきます。
最悪の場合、腎不全になりかねません。
痛み
骨盤臓器脱が重症化すると、膣からずっと脱出したままになります。
膣粘膜が乾燥してガビガビになってきて、痛みが生じてくるんです。
また、子宮が下に強く引っ張られることで、下腹部痛や腰痛を訴える方もいらっしゃいます。
歩行困難
子宮が大きく脱出したままだと、足を閉じられなくなります。
ガニ股でしか歩けなくなるんです。
新患で受診された患者さんで、ときどきこのガニ股で診察室に入ってくる人がいます・・・
手術を受けて、しっかり治しませんか?
ということで、骨盤臓器脱は放置していてもロクなことがありません。
きちんと手術を受けて、治すことをおすすめします。
骨盤臓器脱って、手術すれば、まず確実に治るんですよ。
(近年の再発率は1%くらいで、99%の人は一回の手術で治っています)
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科