わたし、こんど膀胱瘤の手術を受ける予定です。
手術の前に、癌の検査はしてくれるんですか? もし手術中とか術後に癌が見つかったら困りますよね? |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
骨盤臓器脱手術を受ける予定の患者さんで、「手術中に癌が見つかったらどうしよう・・・」と心配される方がいます。
大丈夫。きっちり検査してから手術にのぞんでいますよ。
骨盤臓器脱の手術を行う際には、必ず癌の検査を行っています。
当院で骨盤臓器脱の手術を行う際には、以下の三つの癌の検査を行っています。
子宮がん
これは細胞診という検査を行います。
結果が出るまで二週間かかるので、術前の外来で行います。
定期的に子宮がん検診で細胞診を受けてる人では、省略することもあります。
大腸がん
これは入院してから、手術の前日に、大腸内視鏡検査で調べます。
大腸って、いろんな部位に分かれてるんですけど、骨盤臓器脱手術に関係するのは直腸とS状結腸です。
だからこの部位をしっかり観察します。
通常の大腸内視鏡検査では、2リットルの下剤を飲む必要があるんですけど、手術を受ける人が2リットルの下剤を飲むのは大変です。
だから骨盤臓器脱の術前検査では、座薬で便を出して、大事な場所(直腸とS状結腸)だけ観察するようにしています。
これなら楽に大腸の検査を受けられるんです。
当院では年間400例の骨盤臓器脱や直腸脱の手術を行っていますが、毎年かならず一人か二人、この大腸癌が見つかります。
そして2割~3割の方に、大腸ポリープが見つかるんです(半年~1年後に、内視鏡切除が必要です)
だから大腸内視鏡検査は必須です。
膀胱がん
これは術中の膀胱鏡検査↑で調べています。
手術操作がある程度進んだ時点で、膀胱損傷が無いのを確認すると同時に、膀胱がんが無いこともチェックしているわけです。
女性で膀胱がんが見つかる頻度はとても低いんですけど、過去に一人だけ経験しました。
検査を怠って、手術中や術後に癌が見つかったら、困ったことになります。
がんの検査を怠って、骨盤臓器脱の手術をしてしまったらどうなるか?
たとえば腹腔鏡手術で、おなかの中にメッシュを留置した場合。
もし直腸がんや子宮頸がんを見逃して、骨盤臓器脱手術をやってしまったら・・・
↑こんな風に、直腸や子宮頸部のすぐ近くに、メッシュが留置されることになります。
どんな手術であれ、術後には、周囲に癒着が起こります。
だから癌の手術を行う難度が高くなるんです。下手すると癌を取り切れない恐れも出てきます。
以上、骨盤臓器脱手術の前に、癌の検査は必須というお話でした。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科