おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今回は、「骨盤臓器脱手術で『脱出』と『機能』はどれくらい良くなるのか」というお話をさせていただきます。
これって、「手術でできること、できないこと」と言い換えることもできます。
よろしければ、お付き合いください。
「脱出」は、手術でほぼ確実に治る。
まず、「脱出」に関してです。
骨盤臓器脱(子宮脱膀胱瘤とか、直腸瘤とか)では、約99%の方を、一回の手術で治すことができています。
直腸脱はもっと難度が高いんですけど、それでも95%以上の方を、一回で治すことができています(重症例では苦戦することもありますが)
ということで、「脱出」に関しては、手術でほぼ確実に治せると考えていいでしょう。
「機能」は、手術で確実に良くなる保証はできない。
いっぽう「機能」については、そう簡単にはいきません。
代表的なケースを3つ挙げてみます。
子宮脱膀胱瘤の手術を受けて、排尿異常は良くなる?
一番よくあるのは、これです。
子宮脱膀胱瘤を有する方は、膀胱が下がっているため、↑排尿機能に異常をきたしていることがよくあります。
- 尿道が圧迫されて尿が出にくいとか(赤矢印)
- 膀胱が下がって残尿感とか(青矢印)
手術して膀胱位置を正常に戻せば、この排尿異常は改善することが多いんですけど、なかなか思うようにいかないケースもあるんですよね。
↑手術の刺激をうけることで、膀胱が過敏になって、過活動膀胱のような症状が続いたり。
↑尿道の圧迫が取れて、尿失禁が生じるようになったり。
術後に排尿状態がどうなるか、完全に予測するのは難しいということですね。
ということで・・・
- まず手術で、子宮膀胱の形態を正常にもどす。
- 排尿異常が残るようであれば、状況に応じて手を打っていく。
これが現実的な対処法となります。
直腸瘤の手術を受けて、排便異常は良くなる?
直腸瘤手術も、膀胱瘤手術と事情は同じです。
直腸瘤の↑「膣側の脱出」は、手術でまず確実に良くなるんですけど・・・
「排便異常」は、手術で必ず良くなるという保証はできないんですね。
直腸瘤の「排便異常」は、直腸瘤だけが原因となってるんじゃなくって、↑他の要素(直腸粘膜や筋肉の動きとか、直腸の知覚異常とか)も関わってくるからです。
だから、直腸瘤手術を受ける方で、「排便異常」を伴っている場合には・・・
↑手術しても、このような不満を抱かれる恐れがあるんですよね。
だから、「手術でできること・できないこと」を説明して、納得してくれた人だけを手術対象とするのがポイントです。
直腸脱手術を受けて、便もれは良くなる?
直腸脱を有する人は、肛門の締まりがゆるくなっています。
↑直腸が肛門から出たり入ったりするから、肛門括約筋が引き伸ばされて、こうなってしまうんですね。
直腸脱の手術を受けて、直腸が脱出しなくなったら、この締まりは徐々に回復してきます。
目安は術後3か月です。
ただし「↑ガリガリにやせてる方」とか「高齢の方」とかの場合には、肛門機能が思うように回復してくれないこともあります。
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科