骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。
今回は、骨盤臓器脱手術後にときどき遭遇する「悩ましい訴え」について、お話させていただきます。
目次
術後の外来診察:患者さんの反応は3つに分かれる
私の骨盤臓器脱手術を受けた患者さん
術後の反応は、大きく3パターンに分かれます。
①「調子いいです」という人が大半
大半はこのパターンです。
「まだおりものがでる」という人もよくいますが、これは正常の経過で、二か月すれば止まります。
②ときどき排尿の異常を訴える人がいる
「おしっこが落ち着かない」とか、「尿が漏れやすくなった」とか。
全体の1割~2割が、このパターンです。
これは手術で膀胱が持ち上がって、正常の位置に戻ることで
膀胱が刺激を受けることが原因です。
これは時間とともに軽快してきます。
③たまーに、違和感を訴える人がいる
この「違和感」
術後3か月以降に、たまーに見かける訴えです。
これって、医師が対処に困る訴えの典型なんです。
私に限らず、良性疾患(痔とか鼠経ヘルニアとか)を扱う医師は、しょっちゅうこの訴えに遭遇していると思います。
術後に遭遇する「悩ましい訴え」の代表格:違和感
この「違和感」について、くわしく触れてみます。
「重苦しい」とか「すっきりしない」とか「張る感じ」とか「ピリピリ痛い」とかもそうですね。
なんで悩ましいかと言いますと、理由が3つほどありまして・・・
悩ましい理由①:客観的に確認しようがない
まずこの違和感って、「患者さんがどう感じるか」がすべてで
医師が診察や検査しても、客観的に確認しようが無い・・・というのがひとつ。
悩ましい理由②:違和感が生じる理由もわからない
そして、順調に手術を終え、問題なく経過し退院した人であっても、あとで違和感を訴えてくることがあります。
確認しようがないし、違和感が生じる理由もわからないから、対策の立てようも無いということです。
悩ましい理由③:これといった対処法が無い
さらに「痛み」とかと違って、軽快させる薬とかもありません。
まあたいていの場合、時間とともになじんできて、違和感は消失してくるんですけどね。
違和感に対する私の対処のしかた。そして患者さんの反応パターン
患者さんが術後に違和感を訴えてきた場合
まず診察して、経過が問題ないことを確認したら・・・
「経過は問題ありません。順調ですよ」
「時間とともに落ち着いてくるはずだから、様子を見ましょう」
と言うしかありません。
そして、私が↑こう伝えた場合、患者さんの反応は2パターンに分かれます。
説明に納得するタイプは、そもそも違和感を訴えない・・・
「あーよかった。先生がそう言うなら安心」とか言って、納得して帰っていくタイプ。
「サッパリ系」とか「おおらか系」(?)の患者さんは、こういう展開になります。
とはいえ、そもそもこんな人って、あんまり違和感とか訴えてこないんですけどね・・・
納得しないタイプは、説明に苦労しがち
いっぽう
「経過が問題ないなら、なんで違和感があるの?」みたいに、もっと納得しなくなる人もいるんですよね。
ぶっちゃけ、「なんでと聞かれても分からない」というのが本音です・・・
生体現象を人間が全てコントロールするのはそもそも不可能
そもそも、手術に代表される医療行為の宿命として・・・
「人体に起こる無数の現象や症状を、人間が完全にコントロールするのは不可能」
というものがあります。
そして「違和感」って
「人間(ここでは術者)がコントロールできないこと」の最たるものであります。
違和感を自在にコントロールできる域まで極められたらいいんですけど・・・
そこまでいったら「魔法」の領域っぽくなるから、まあ難しいですよねえ。
じっさい手術やってる時には、そこまで考えてる余裕は無くって・・・
「手術を安全に終えること」「一発で治すこと」これだけで精いっぱいなんです。
私に限らず、他の外科系医師も、そんなもんじゃないかと思います。
赤木一成 骨盤臓器脱外科医師