9月21日に撮影した中秋の名月です。めっちゃ明るい・・・
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
子宮脱膀胱瘤の手術を7例行いました。
この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。
とくに問題なく経過して、みなさん予定通り退院されました。
まあ、いつも通りの平和な一週間ですね。
いつもこの時期から、忙しくなってきます。
トラブル無い手術をやり続けて、力業で平和な日々を維持していく所存です(笑)
なんで手術前にこんなに検査があるの?
手術を受ける患者さんから、「なんでこんなに検査が必要なの?」と言われたことがあります。
必要最小限の検査にしぼって行ってるんですけど、それでも多いと思う方がおられるようですね。
検査の必要性について、ひとつひとつ説明しても、実感がわかないかもしれませんね。
だからここでは、「検査をやらずに手術すると、どういう危険が起こりうるか」という視点で書いてみましょうか。
骨盤臓器脱手術の前に、全員に検査を行っています。
当院で骨盤臓器脱手術を受ける患者さんに行う検査は、以下のようなものです。
効率よくやるので、そんなに時間はかかりません。
①血液検査
②心電図
③胸部レントゲン
④呼吸機能検査
⑤血栓リスク検査
⑥子宮がん検査
⑦大腸内視鏡 etc…
あとは患者さんの状態に応じて、精密検査を追加することもあります。
①血液検査をやらずに手術するとどうなる?
血液検査で判明する事項としては、
貧血、低白血球症、低血小板症、凝固能力異常、肝機能異常、腎機能異常、低栄養状態
などがあります。
だから血液検査をやらずに手術すると、以下のようなトラブルが起こりうることになります。
貧血:心臓の負担が増えて心不全を起こしやすくなる
低白血球:感染を起こしやすくなる
低血小板・凝固能力異常:血が止まらなくなる
肝機能異常:肝不全を起こして致命的になる
腎機能異常:腎不全を起こして透析が必要となる
低栄養状態:傷が治りにくくなり、感染を起こしやすくなる
いずれも、重大なトラブルとか、致命的なトラブルが起こりえるわけですね。
②心電図をやらずに手術するとどうなる?
心電図では、脈拍の異常とか、心血管の流れ具合とか、いろんなことが分かります。
心電図をやらずに手術すると・・・
心筋梗塞・狭心症・不整脈などを見逃して、ときに致命的となりえます。
③胸部X線検査をやらずに手術するとどうなる?
胸部X線検査でチェックしていることは、呼吸器系・循環器系の異常です。
呼吸器系の異常としては、肺炎・肺結核・肺気腫・胸水貯留・肺がんなど。
循環器系の異常としては、心不全・胸水貯留・胸部大動脈瘤など。
胸部X線検査をやらずに手術すると・・・
心不全が悪化したり、肺炎が悪化したり、結核菌が院内に広がったりと、重大なトラブルが起こりうるんです。
④呼吸機能検査をやらずに手術するとどうなる?
これは全身麻酔の手術を行う時に、必須の検査です。
(下半身麻酔〔脊椎麻酔〕のときには行いません)
呼吸機能低下を見落として手術すると・・・
術後に呼吸不全がおこりやすくなり、人工呼吸器から離脱できなくなります。
また痰を排出できないから、肺炎が起こりやすくなって、ときに致命的となります。
⑤血栓リスク検査をやらずに手術するとどうなる?
下肢の静脈に、血栓ができている人がいます。
この血栓が、術中術後に肺に飛ぶと、ときに致命的となります。
いわゆる「エコノミークラス症候群」というやつです。
骨盤臓器脱の診察時に、同時に下肢もチェックしています。
血栓リスクが高い場合には、あらかじめ下肢エコー検査を行って、血栓の有無を確認するようにしています。
⑥子宮がん検査をやらずに手術するとどうなる?
これはまあ、当たり前ですね。
子宮脱を手術するんだから、子宮に癌がないことを確認しておく必要があります。
子宮がんを見逃して子宮脱手術をやってしまうと、癌細胞を体内に取り残して、命にかかわります。
⑦大腸内視鏡をやらずに手術するとどうなる?
子宮や膣は、大腸に隣り合っています。
だから骨盤臓器脱の手術を行うと、大腸に癒着が起こりやすくなります。
もし後日、大腸がんが見つかったら、この癒着のために手術に支障が生じる恐れがあります。
骨盤臓器脱手術の前には、大腸内視鏡検査も全員に行っています。
「見逃すと命にかかわる重要な検査」だけ厳選して行っています。
・・・ということで
手術前に行う検査は、いずれも「見逃したら命にかかわる重要な検査」だけを厳選して行っています。
これらの検査は(特に①~⑤)、どこの病院でも、どんな手術でも、術前に共通して行われているものばかりなんです。
もちろん、「検査したから重大トラブルは絶対起こらない」というわけではありません。
人体を扱う以上、だれでも想定外のトラブルが起こる可能性は、0ではありません。
あくまでも「トラブルが起こる可能性をできるだけ低くする」ということですね。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科