子宮脱・膀胱瘤の術式を比較する

 

子宮脱や膀胱瘤の手術は、①従来法(経腟手術)・②TVM手術(経腟手術)・③腹腔鏡下仙骨膣固定術(経腹手術)に分けられる。

ここではわれわれの施設で日常的に行われている、これらの3つの術式について、「長所短所」と「使い分け基準」を示す。

実際にはこの3つの術式を「日常的に」行っている医療機関は、全国的にも数えるほどしか存在しない。

(注)これはあくまでも現時点における当院(赤木)の術式選択基準であって、この選択基準は医療機関(医師)によってバラバラなのが現状です。また将来的にも状況に応じて変化していくことでしょう。

 

①従来法(メッシュを使わない経膣手術)

■長所
手術時間は短い(1時間ちょっと)
手術の侵襲(ダメージ)が小さい
メッシュ(異物)を使う必要がない

■短所
膣壁に傷ができるので、性交障害の可能性がある
重度の骨盤臓器脱では、再発の可能性が高くなる

■こんな患者さんに行っている
性生活を重視しない人で、それほど重度でない骨盤臓器脱の場合。

②TVM手術(メッシュを使う経膣手術)

■長所
手術時間は短い(1時間ちょっと)
手術の侵襲(ダメージ)が小さい
重度の骨盤臓器脱でも対応できる

■短所
膣壁に傷ができるので、性交障害の可能性がある
メッシュを使う必要がある

■こんな患者さんに行っている
性生活を重視しない人で、「重度の骨盤臓器脱」や「従来法の再発例」などの場合。

③腹腔鏡下仙骨膣固定術(メッシュを使う経腹手術)

長所
膣壁に傷ができないので、性交障害の可能性は経腟手術より低い
重度の骨盤臓器脱でも対応できる

■短所
手術時間が長い(3時間超えることが多い)
おなかの中から子宮を取って内臓を切ったり縫ったりする必要がある
手術の侵襲(ダメージ)が大きい
メッシュを使う必要がある

■こんな患者さんに行っている
性生活を重視し、そのために侵襲が大きくなるのを受け入れられる人。

 

当院における術式選択基準の目安

●まず経膣手術がよいか経腹手術がよいかを判断する

まず「性生活を重視するかどうか」で、経膣手術か経腹手術を選択する。

性生活を重視しないのであれば経腟手術(従来法かTVM手術)。重視するのであれば経腹手術(腹腔鏡下仙骨膣固定術)。

 

●経腟手術を行う場合、従来法がよいかTVM手術がよいかを判断する。

手術中に麻酔をかけた状態で子宮を引っ張ってみて、さらに手術を進めていって、「従来法がよいかTVM手術がよいか」をその場で判断して使い分けるようにしている。

「メッシュを使わなくても再発の可能性は低い」と考えられる場合には従来法。

「メッシュを使わないと再発する可能性が高い」と考えられる場合にはTVM手術。

(注)「外来診察時に判断した骨盤臓器脱の状況」と、「手術中の最終判断」は異なっていることがよくあるので、このやり方が一番うまくいくと考えています。

 

子宮脱・膀胱瘤の術式を比較する:解説

骨盤臓器脱の術式は、上にあげたように3種類あります。

いずれの術式にも長所短所があるため、「患者さんの状態」や「本人・ご主人の希望」に応じて、適切に使い分けるのが理想的です。

ここでは例として、「私(赤木)はこんな感じで術式を選択している」という判断の過程を示してみます。

 

●73歳・性生活無し

性生活が無いので経腟手術で。

術中所見で、それほど大きく脱出しない中程度の子宮脱+膀胱瘤だったので、従来法を選択。

(腹腔鏡下仙骨膣固定術でも治せるが、性生活の無い人に侵襲の大きい経腹手術をやる必要は無いと考える。またTVM手術でも治せるが、メッシュ無しでも十分治せそうな人にわざわざ異物〔メッシュ〕を使う必要はないと考える)

 

●56歳・性生活あり

今後も性生活を重視したいという意向があるため、腹腔鏡下仙骨膣固定術を選択。

(これは迷わず決められる)

 

●81歳・性生活無し。他の病院で従来法の手術を受け、その後膀胱瘤再発

性生活が無いので経腟手術で。

従来法を行って再発した場合には、再度従来法を行っても再発率が高くなる。

よってTVM手術を選択。

(腹腔鏡下仙骨膣固定術でも治せるが、高齢者に侵襲の大きい経腹手術をやる必要は無いと考える)