直腸瘤の主な訴えには、「膣側からの脱出」と「排便障害」の二つがある。

直腸瘤の「膣側からの脱出」を治すのであれば、TVM手術などの経膣手術を行うことでほとんど全員が満足する成績が上げられる。

いっぽう「排便障害」が主な訴えの場合には、治療した患者さん全員を100%満足させるのは難しい。
「完全に良くなった」という人もいれば、
「7割くらいよくなった」という人もいるし、
「ある程度改善したけどまだちょっと気になる」という人もいて、いろいろな満足度の人が分布することになる。

排便障害の原因には、直腸瘤だけでなく、直腸重積や粘膜脱などいろいろな病態がかかわっており、さらに排便時の筋肉の動きもかかわってくるため、全員を完璧な排便状態に戻すことは難しい。

完璧な状態を目指して頑張りすぎると、逆に合併症が起こるリスクが高くなる。

だからほどほどのところで満足し、薬や生活習慣改善などを組み合わせて上手に付き合っていくのも立派な治療といえる。

 

解説

「直腸瘤の手術をすると、必ず完全に治りますか?」

直腸瘤の手術を受ける方であれば、だれでも気になる疑問でしょう。

 

直腸瘤の主訴(患者さんがもっとも気にしていること)には、「膣側からの脱出」と「排便障害」の二つがあります。

このうち「膣側からの脱出」を治すのであれば、TVM手術などの経膣手術を行うことで、ほぼ全員の患者さんに満足いく結果を提供できています。

いっぽう「排便障害」が主訴の場合には、話が難しくなります。

この場合も「とても良くなって満足」という方がもっとも多いのですが、「7割くらいよくなった」とか、「ある程度良くなったけどまだ少し気になる」といった感じで、あいまいな結果になることもよくあります。

 

直腸瘤の「膣側からの脱出」は見た目で分かるので、医師も患者さんもはっきり治療の評価を下すことができます。

いっぽう「排便障害」は、患者さんの自覚症状がすべてです。

自覚症状とは、「患者さんがどのように感じるか」ということです。

医師が見て「直腸瘤は完全に治っている」と思っても、患者さんは「まだ排便障害が気になる・・・」と感じることがあるわけです。

しかも排便障害の原因には、直腸瘤だけでなく、直腸重積や粘膜脱などいろいろな病態がかかわっており、さらに排便時の筋肉の動きもかかわってきます。多くの原因が排便障害にはかかわってくるわけです。

だから排便障害の治療は、「治るか治らないか」という白黒はっきりしたものにはならないことがよくあります。

「完全に良くなった人」から「まだ気になる人」まで、さまざまな満足度の人が分布することになるわけです。

 

「排便障害の人全員を手術で完璧に治す」というのは、そもそも無理な注文なのかもしれません。

完璧な状態を目指して頑張りすぎると、逆に合併症が起こるリスクが高くなってしまうわけです。

肛門科の手術はみんな同じことが言えます。肛門科の医師は、「切りすぎた肛門は元に戻らない」「やり足りなかったならあとで追加できるが、やりすぎてしまったらあとでやり直すことはできない」などと肝に銘じて、「やりすぎない手術」を心がけています。

ある程度良くなった状態で納得して、薬や生活習慣の改善を行いつつ、疾患とうまく付き合っていくのもまた立派な治療なのです。