・脱出している直腸の粘膜をはがして、筋肉を縫い縮める方法。
・手術の負担が軽く、かつ成績もよいので、高齢者によく行われる術式のひとつ。
デロルメ法について解説する。
デロルメ法は粘膜をはがして、筋肉をアコーディオン状に縫い縮める手術。
粘膜をはがす必要があるので、癒着の強くない直腸脱が対象となる。
また筋肉を縫い縮められる距離には上限があるので、あまり大きく脱出しない直腸脱が適している。
「大きく脱出する直腸脱」や、「何度も手術して癒着している直腸脱」には向いていない。
左:直腸が脱出している状態。
右:図の点線のラインから、電気メスを使って粘膜を切開する。
表面をおおっている粘膜を、先端方向に向かって剥離(はくり:はがすこと)してゆく。
粘膜の剥離が完了したところ。
粘膜下の筋肉が露出される。
直腸の筋肉を図のように縫ってゆく。
糸をしばると、直腸がアコーディオン状に縮んで正常の位置に戻ってゆく。
余った粘膜は切り捨てる。
余った粘膜を切り捨てたのち、直腸側粘膜と肛門側粘膜を縫い合わせる。
肛門がゆるい人の場合、これだけだと再発のリスクが高くなる。
肛門周囲に特殊な繊維を通し、正常の締まりに近づける(ティールシュ法)
直腸脱の手術(デロルメ法):解説
ここでは、われわれの施設で数多く行われている「デロルメ法」について説明します。
われわれの施設では、年に100例を超える直腸脱手術を行っています。
直腸脱は80代くらいの高齢者に生じやすいため、侵襲(ダメージ)の小さい「経肛門手術」がまず考慮されます。
その「経肛門手術」のなかでもよく行われているのが、このデロルメ法と、三輪-Gant法の二つになります。
どちらも一長一短あるので、「経肛門手術」の中でもどちらを選択するのかは、施設によって意見が異なっているのが現状です。
この術式は、イラストを見る限り単純明快な方法なのですが、実際には粘膜を正確な層ではがしてゆき(剥離といいます)、正しい場所で縫合するには技術を要します。
正確な層で剥離を行えないと、筋肉を傷つけて穴をあけてしまったり、多量に出血させて長時間を要する大手術となってしまうことがあります。
また粘膜の剥離が不十分となり、高い確率で再発させてしまいます。
そのため、このデロルメ法を日常的に行っている病院は、全国的にみても一部の先進的な大腸肛門科専門病院に限られているようです。
作成:赤木一成(辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科医師)