たまーに行っている直腸脱の術式③:PPH

  • 2020年8月18日
  • 2020年10月25日
  • 直腸脱

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

当院では年間100例くらいの直腸脱手術を行っています。

今回は、たまーに行われる直腸脱術式その③として、PPHという術式についてお話いたします。

 

PPHは、器械を用いて直腸粘膜脱を治す行う方法です。

画像引用:ETHICON

 

直腸脱の術式の一つに、PPHというものがあります。

これは特殊な器械↑を用いて、直腸脱を治す方法です。

たるんで脱出してくる直腸粘膜を、リングみたいに切り取ります。

 

↑直腸粘膜だけが脱出してくるような、軽症の直腸脱(直腸粘膜脱)に行えば、きれいに治すことができます。

 

その一方で、↑直腸が筋層と一緒に大きく脱出してくる直腸脱(完全直腸脱)は、このPPHで治すことはできません。

このようなケースでは、デロルメ法とかを行う必要があります。

 

もともと痔核の術式として普及しましたが、最近あまり行われなくなりました。

このPPH、15年ほど前に「痔核の最新治療」としてイタリアから導入されて、一世を風靡しました。

でもその後、PPHはあまり行われなくなっていきます。

 

一つ目の理由は、「PPHが向く痔核」と「向かない痔核」が分かってきたこと。

PPHが向くのって、「↑3つの痔核サイズが揃っている」タイプの痔核です。

でもこんなタイプの痔核って、多数派ではありません。

 

「↑一個だけ大きく出てくるような痔核」にはPPHは向きません。

でも実際には、こんなタイプの痔核の方が、多数派なんですよね。

 

もう一つの理由は、↑ジオンという注射薬の登場です。

PPHは粘膜を切り取るので、時に術後出血が起こります。日帰りでやるには敷居が高いです。

でもジオンは注射するだけなので、出血するリスクがほぼ無く、日帰りクリニックとかで一気に普及したんですね。

 

現在でも直腸粘膜脱に対して、行われることがあります。

直腸粘膜脱は、この「3つの痔核サイズが揃っている」タイプの痔核と、似たような形態をしています。

だからPPHを行うと、きれいに治すことができるんです。

当院では現在でも、直腸粘膜脱に対して、たまに行うことがあります。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科