骨盤臓器脱(子宮脱・直腸脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱など)の手術にはいろいろなものがあります(TVM手術、腹腔鏡下仙骨膣固定術、直腸脱経肛門手術、直腸固定術、直腸瘤経肛門手術など)

辻仲病院で行われている骨盤臓器脱の手術件数は年間300件を超えており、これは全国屈指の件数です。毎日のように骨盤臓器脱の手術が行われています。

このなかでもっとも多く行われているのはTVM手術です。

ここでは参考として、私(赤木)が手掛けた1000例超のTVM手術の成績について、Q and A形式で開示してみます。

 

TVM手術は安全な手術なのか?

「100%安全で、合併症も再発もゼロ」の手術はこの世に存在しませんが、長年にわたって術式の改良を積み重ねてきた結果、近年では手術の安全性は飛躍的に高くなっていると言えます。

入院中には、「クリニカルパス」という表に準じて、術後の患者さんの管理を行います。

クリニカルパスとは、手術の前後に用いられるスケジュールのことです。

スケジュール通りに順調に経過すれば「クリニカルパス達成」、合併症が起こってスケジュール通りに経過しなければ、「クリニカルパス脱落」となります。

2018年1月~12月の間に私が行ったTVM手術192例のうち、190例はクリニカルパス達成できており、クリニカルパス脱落となったケースは2例でした。

これはTVM手術を受けた患者さんのうち約99%の方が、大きなトラブルなく経過し、ほぼ予定通り退院したことを意味します。

入院中に生じるトラブルの圧倒的多数は、「膀胱炎」「便秘」「残尿がやや多い」といった軽微なものであり、いずれも内服薬で治ります。

重度のトラブル(多量の出血・臓器損傷など)が起こる可能性はきわめて低いと言えます(いずれも数百人に一人の割合)

痛みに関しては、術後数日間は多少の痛みを感じる人がいますが、これは退院する頃にはほぼ消失します。

 

再発率はどうか?

現時点の再発率は2%台です。

過去に広く行われていた手術(子宮を取って膣壁を縫い縮める方法:「従来法」と言います)の再発率は30~40%という報告が多いので、TVM手術の再発率はこれに比べると圧倒的に低いと言えます。

再発率ゼロの骨盤臓器脱手術はこの世に存在しないので、「必ず100%一発で治します」と約束することはできません(これは全国どこの施設でも同じです)

もし再発した場合には次の手を打つことで、最終的に全員の方を治すことが可能と言えます。

 

手術で使ったメッシュの不具合は起こらないのか?

TVM手術では、小型の医療用シート(メッシュ)を用います。

このメッシュは、「ポリプロピレン」という素材でつくられています。

これは、そけいヘルニア(脱腸)の手術で長い実績がある素材で、もっとも安全性が高く信頼のおけるものです。

メッシュを入れることによって生じうるトラブルとして、①メッシュの膣壁露出、②メッシュ感染 の二つがあります。

 

①メッシュの膣壁露出

メッシュは体にとって異物であるため、ときに体からメッシュを押し出す反応が起こり、膣壁からメッシュの一部が少し露出してくる人がいます。

これまでのメッシュ露出率は1%台です。

長期的に見ると、このメッシュ露出をきたす人の数はもう少し多くなると思われますが、それでも3%台くらいに落ち着くだろうと考えています。

メッシュが露出しても、性行為を行わない方では自覚症状も無いことが多いので、退院後の定期診察で医師が気づくというパターンが大半となります。

メッシュが露出した場合には、露出したメッシュのところだけハサミで小さく切り取れば治るので、対処は難しくありません(日帰りか一泊でできます)

 

②メッシュ感染

メッシュ感染とは、メッシュに細菌が繁殖して化膿することをいいます。

メッシュ感染が起こったら、メッシュを取り除く必要があるのですが、いままでこのメッシュ感染が起こったケースはありません。

メッシュを使わない手術を受けたいのであれば、もちろん対応は可能です。
ただし先述したように、再発率がはるかに高くなります。

だからメッシュは「必要な場所だけ最小限」に使う方針が最善と考えています。

 

排尿状態の変化について

①術前から有していた排尿異常について

骨盤臓器脱の患者さんの多くは、膀胱が下がって尿道が圧迫されているため、「尿が出にくい」「残尿感」「頻尿」などの症状を有していることがよくあります。

これらの症状の多くは、手術で膀胱の位置が正常に戻ることで軽快します。

 

②術後に生じる尿もれについて

もともと尿道の締まりがゆるい人の場合には、手術で尿道の圧迫が解除されることで、術後に「尿が漏れやすくなった」と感じることがあります。

これは手術の合併症で尿が漏れやすくなったのではなく、「もともと尿道のしまりがゆるくて尿が漏れやすい体質だった」ということです。

尿が漏れやすくなった場合には、治療することで治せます。