手術は「やり続けること」が難しい 今週の骨盤臓器脱手術は7例

背中をかじられてる?のに、ふつうに泳いでる魚がいました・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、例によって「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう、数週間前の日常を描写しています。

 

今週は骨盤臓器脱手術を7例行いました。

 

今週の骨盤臓器脱手術は7例でした。

5例が子宮脱+膀胱瘤、2例が↑直腸脱です。

 

なぜか今年に入ってから、直腸脱の患者さんが多いです。

 

直腸脱の患者さんって、遠方から来院される方が大半なんです。

直腸脱の手術を日常的にやっている病院って、ほとんど無いのがその理由です。

 

 

骨盤臓器脱(子宮脱や膀胱瘤)の手術であれば、「お住いの場所」や「飲んでる薬」にかかわらず、だいたい一週間入院で大丈夫なんです。

比較的若い人(60代70代)が多くて、ふくよかで元気な人が多くて、術後出血もほとんど起こらないからですね。

 

いっぽう直腸脱では、長目の入院期間をおすすめすることが多いです。

相当高齢(80代90代)の方が多く、

全身状態が悪い人(心臓とか肺とか腎臓とか糖尿とか栄養状態とか)が多く、

抗血栓薬(血液サラサラの薬)を飲んでる人も多く、

遠方にお住いの人が大半なので・・・

いろいろと条件が不利な場合が多いからです。

 

もし退院後に、便通異常とか出血が起こったら、また来院するのが大変ですよね。

直腸脱手術を受ける方で、遠方にお住いであれば、長目の入院が安全ですよ。

 

手術は「やり続けること」が難しい。

 

わたくし、週に7例ほどの手術を、術者として行っています。

全体の7~8割が子宮脱+膀胱瘤の手術で、残りが直腸瘤・直腸脱・尿失禁・痔核などの手術です。

 

はた目には、いつも同じ作業を、淡々と続けてるように見えるかもしれませんね。

でも実際には、(自分で言うのもなんですが)これって容易なことじゃないんです。

 

患者さんの状態は、一人ひとり異なります。

やりやすそうな症例もあるし、困難症例もあります。

健康で低リスクの症例もあれば、持病だらけでハイリスクの症例もあります。

 

若手のうちは、やりやすそうで低リスクの症例が、上司から割り当てられます。

上司の監督の下で、いわば保護された状態で、手術を行います。

手術の責任やプレッシャーは、上司が引き受けてくれているんです。

 

経験を積むにしたがって、困難症例やハイリスク症例を担当するようになります。

年下の医師と手術したり、自分一人で手術したりと、そんなケースが増えてきます。

 

そして最終的に責任者の立場になったら、どんなに難しい症例でも避けられなくなり、助けてくれる上司もいなくなります。

 

 

誰にも頼れない全責任を負う立場で、あらゆる難度の手術をすべて安全にクリアして、毎年100例200例と結果を出し続け、それを何年も続けていかなければいけません。

人体相手の仕事だから、全員が予定通りに経過するとは限らない。

もし一例でも重大事故を起こしたら、術者生命を絶たれる可能性もある。

 

そんなプレッシャーを背負いながら毎日毎日やり続け、何百例という実績を重ねた結果、「あのドクターなら大丈夫」という信用を得てはじめて一人前。

ここまで来てはじめて、「手術ができる」と言えるんだと、わたしは考えます。

 

「難しい症例は任せてもらえない」とか、「あのドクターで大丈夫?」と周囲に思われるようでは、まだ半人前ということ。

さらなる修行が必要です。

 

そして・・・

「あのドクターはダメ」という評価になったら、続けていくことはできない。

引導を渡される。

 

手術の世界って、そんな感じです。

「やり続けること」が難しい。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科